ご寄稿

過去、妙義エンナーレのためにご寄稿いただいた文章です。肩書きや内容にも今現在とはそぐわない内容がございますが、当時の空気はそのままに掲載させていただいてます。ご寄稿いただいた皆様本当にありがとうございます。

妙義33ennale!

帰ってきた妙義エンナーレ

2008年から2011年まで、4年連続で毎夏行われていた「妙義エンナーレ」が帰ってきた。会期を3月に変え、前回から3年半ぶりの開催である。今回は2人の初参加を含んで7 人の気鋭の作家が顔をそろえる。

私は20134月から富岡市立美術博物館の館長を引き受けているが、実は妙義ふるさと美術館の館長も兼任している。美術館に限らないが、高齢化が進む日本社会の中で、若者たちを呼び戻すことは将来に関わる重大事だ。そんな中で、地域の若者たちが中心となった「妙義エンナーレ」の再開は美術館として願ってもない。しかも本展は、多様化した現代の美術表現を知る上で申し分のないクオリティーをもって、極上の機会を提供してくれる。「妙義エンナーレ」を毎回楽しみにしている人たちは勿論、現代美術になじみがない人たちにも来ていただきたい。そして是非会場で作家たちに声をかけて欲しい。コミュニケーションこそが、作家にもあなたにも新しい世界を押押し広げてくれるのだから。

染谷滋 (富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館&妙義ふるさと美術館長)


妙義30ennale!

パワースポットが話題になって久しい。どうやら、妙義山もそのひとつらしい。私自身、パワースポットの定義やその効能について詳らかでないが、妙義山は古くから文人墨客に多くのインスピレーションを与え続けた魅力に富んだ場所だ。
その妙義山を絶好の場所から望む美術館で、若いアーティストたちが集い30年に一度の美術の祭典「妙義30ennale」が開かれる。
この展覧会のユニークさは、アートの「自作農」と「地産地消」をめざすところにある。群馬という場所にこだわりこの地の人たちに見て欲しいという思いは、ローカルなエリアで完結しようという狭隘な考えからではなく、アートが流行現象として消費される場所から距離を置き、地に足をつけてアートと向き合いたいという切実な思いからきているように思える。
身体を使って描いたり、染色技法を駆使したり、現代の形象に伝統的な美意識との共通点を見出したり・・・とアーティスト7人は、手法も追い求める世界も異なった、個性豊かな面々だ。
アートがもたらすパワーが人々に活力を与え、生きる場所さえも変える力を持つことを確かめ分かちあう、新しい「アート・パワースポット」誕生の現場に立ち会いたいと思う。

中島幸子(群馬県立近代美術館 学芸員)


妙義29ennale!

 群馬県立近代美術館では「群馬青年ビエンナーレ」*という30歳以下を対象とした公募展を開催しています。もともと群馬の若い作家たちの活動を奨励しようとはじめられたものですが、より高いレベルで競い合うことが地元の作家たちにとっても刺激になるだろうということで、今は全国公募になっています。もしこの「群馬青年ビエンナーレ」の存在が、「妙義29エンナーレ」開催に少しでもきっかけを与えたのだとしたら、美術館で働く者としてはうれしいことです。

 最近は、各地で地域に密着したアート活動が盛んです。でもそういったものが、ただ広い展示場所を求めて他所からやってきた作家たちによる、単なるお祭り騒ぎで終わることもままあります。作家がその土地で継続して活動していくためには、「アートシーン」の存在が必要になります。それは作家が、作品をみる人、買う人、批評する人などと出会うことではじめて生み出されるものです。群馬のような地方にも、作品を介したその出会いの場を提供する画廊や美術館は存在しますが、残念ながら「シーン」と呼べるものが形成されているとは言い難い状況です。

 群馬に生まれて作家を目指す人の多くは、地元の高校を出て東京の美術大学で学び、卒業後は東京にとどまって作家活動を続けるか、地元に帰って仕事に就くか、選択を迫られることになります。群馬で作家活動を続ける、というのはかなり難しいのではないでしょうか。

 そこで作家の立場から「アートシーン」の形成に一役買おうと、温井大介は2008年にこの展覧会を立ち上げます。年に一度のアニュアル展として3回目となる今回、参加する9名の作家の大半が群馬県出身で、80年代生まれの20代です。

 会場は、奇岩、怪石で有名な妙義山の懐に抱かれた「妙義ふるさと美術館」。車なら松井田妙義ICからすぐですし、軽井沢に行く途中にちょっと寄り道というのもいいのではないでしょうか。群馬に「アートシーン」を作り出すためにもぜひ多くの人に展覧会を見てもらい、文句でもいいから作家に声をかけてもらいたいと思います。

 来年はおそらく「妙義30エンナーレ」として開催されるのでしょうが、もし「第2回妙義29エンナーレ」があるとすれば、それは2039年のこと。50代になった彼らがそのとき充実した作家活動を送っているかどうかは、あなたのその一言にかかっているかもしれません。

※「群馬青年ビエンナーレ2010」は、7月31日(土)から10月11日(月・祝)まで、群馬県立近代美術館で開催されました。

田中龍也 (群馬県立近代美術館 学芸員)